2024.10.02 分かり合えなさとともに生きる

「9月1日問題」というものがある。
夏休みが終わり、二学期が始まる9月1日に子どもたちの自殺が特に増える深刻な社会問題のことだ。
この日を境に、夏休みから学校生活に戻るプレッシャーが多くの若者に重くのしかかる。
いじめ、学業不振、家庭内の問題といったさまざまな要因が、子どもたちを追い詰めていく。
社会は子どもたちに対して十分なサポート体制を提供できておらず、特に学校や家庭が「居場所」として機能していないことが、自殺増加の背景にある。

多様性が叫ばれる時代だが、一方で私たちはつい、個々の違いを受け容れられず、「普通はこうでしょ」「常識的にそれはおかしいでしょ」などと口にしたくなってしまう。
この同調圧力が、孤立感を生み出し、結果的に自分や他人の自己肯定感の低下や居場所の喪失につながっているというのに。
さらに、「社会のレールに乗らないと生きていけない」という思い込みが、人それぞれにあるはずの多様な生き方や幸福を否定し、逃げ場のない状態に追い込んでしまう。

これを防ぐために私たちは「他者性」、つまり、「私とあなたは違う」ことを受け入れ、認める必要がある。
一見寂しいことのように思えるが、他人と違うことが、「自分らしさ」を形づくる。
努力して「何者」かになる必要もなくなり、自分にとって大切なものを奪われることもなくなる。

親や先生、上司に嫌なことを言われたとき、子どもや部下についイライラしてしまったとき。
「私とあなたは違う」と心の中で唱えてみてください。

豆塚エリ
1993年、愛媛県生まれ。別府市在住の詩人・エッセイスト。16歳で自殺未遂、以後車椅子で生活。詩や短歌、短編小説などを発表し、コラム執筆やテレビ出演など幅広く活動している。2022年、書き下ろし自伝エッセイ「しにたい気持ちが消えるまで」(三栄)を出版し、ヨンデル選書大賞を受賞。2023年10月、イラストレーター・こっちゃんとのコラボによる絵本「夜空に虹を探して」を出版。