2024.06.01 自分を愛するということ

「失敗する権利」というものをご存じだろうか。ポーランドのコルチャック医師が子どもの基本的人権として提唱した。失敗こそ成功の糧であって、失敗を通じて自ら考え行動する主体性が生まれる。もっと言えば、失敗するからこそ人を頼ることを知るし、ありがたいとも思える。他人の失敗を見て「自分もそうだったなあ」といつかの自分を懐かしみ、そしていずれは自分が頼られる人になる。そうやって頼り頼られることが「〝社会〟人」になることではないか。

今年3月、「働きたいけど働けないを支えたい。~豆塚エリの居場所作りプロジェクト」と銘打って、在宅でも就労可能なライターを養成する障害者向けのオンラインライタースクール開校を目指して約1カ月半のクラウドファンディングを行った。200名以上の方に支援していただき、目標金額を達成することが出来、これから本格的に事業を動かしていく。

この国の働けている障害者は障害者人口のたった6%という衝撃的な統計がある。また、障害あるなしに限らず、現代社会では、一度社会のレールからはみ出した人たちが再び社会人として働き生活するということは自力では限りなく難しい。挑戦や失敗、挫折を嫌う風潮が居場所を奪い、多くの人の〝生きづらさ〟につながっているのかもしれない。今こそ「失敗する権利」を声高に主張する時だ。うまくいかなかった時、やらかした時、心の中で「失敗する権利」を行使したのだと思う、それだけでいい。なんだか気持ちが軽くなりませんか?

豆塚エリ
1993年、愛媛県生まれ。別府市在住の詩人・エッセイスト。16歳で自殺未遂、以後車椅子で生活。詩や短歌、短編小説などを発表し、コラム執筆やテレビ出演など幅広く活動している。2022年、書き下ろし自伝エッセイ「しにたい気持ちが消えるまで」(三栄)を出版し、ヨンデル選書大賞を受賞。2023年10月、イラストレーター・こっちゃんとのコラボによる絵本「夜空に虹を探して」を出版。